公認会計士試験は、受験資格に制限(年齢、学歴、国籍等)がなく、誰でも受験可能です。
そして、公認会計士試験は、学生だけでなく社会人の合格者も増やす意向から、平成18年(2006年)に試験制度が現在の制度に変更されたことにより、1次試験(短答式試験)や2次試験(論文式試験)の試験免除や科目免除が可能になりました。なお、免除には受験者が出願時に申請する必要があります。
意外と知られていないこともあるので、今回は公認会計士試験における免除について、以下にその内容をまとめました。
短答式試験の免除について
短答式試験は、年2回(12月及び5月)実施され、どちらかに合格すれば、論文式試験(8月)を受験可能です。
ただし、2021年(令和3年)は新型コロナウイルスの影響で日程が変更されています。
短答式試験は、合格年度+2年間免除することが可能です。つまり、1度短答式試験に合格すれば、論文式試験を3回受験することが可能です。(例:2020年度に短答式試験合格した場合、2020年度と2021年度と2022年度の論文式試験を受験可能。)
短答式試験の免除は、特定の資格を有することによる免除になります。
短答式試験の全部免除
1.大学等において3年以上商学に属する科目の教授若しくは准教授の職にあった者又は商学に属する科目に関する研究により博士の学位を授与された者
2.大学等において3年以上法律学に属する科目の教授若しくは准教授の職にあった者又は法律学に属する科目に関する研究により博士の学位を授与された者
3.高等試験本試験合格者
4.司法試験合格者及び旧司法試験第2次試験合格者
公認会計士・監査審査会 公認会計士試験に関するQ&A Ⅱ.試験科目の免除について
https://www.fsa.go.jp/cpaaob/kouninkaikeishi-shiken/qanda/index.html#menjo2
上記に該当する場合、申請することで要件を満たしていると判断されれば、短答式試験が免除されます。
短答式試験の一部科目免除
ここでは、短答式試験(全部)を免除することはできませんが、科目別に試験が免除となるもの(3パターン)を紹介します。
1.税理士資格の保有者、または、税理士試験科目の簿記論と財務諸表論の2科目の科目合格者
⇒ 財務諸表論を免除可能。
2.会計専門職大学院で一定の単位(簿記・財務諸表等、管理会計、監査論)を取得
⇒ 財務諸表論、管理会計論、監査論を免除可能。
3.上場会社、会社法上の大会社等で会計や監査業務に7年以上勤務経験がある場合
⇒ 財務諸表論を免除可能。
論文式試験の免除について
論文式試験を受けることで得られる免除
論文式試験は、52%の得点比率を基準として合格かどうかを判断されます。つまり、受験科目の合計で52%の得点比率があるかどうかが合格の基準になります。
ただし、総合得点では合格にならない場合でも、特定の科目で上位の得点比率を得ることができた場合には、当該科目について翌期の試験が免除することが可能です。この場合、最低でも60%以上の得点比率が必要になる場合が多いです。
なお、この科目免除は翌2年分の論文式試験で科目免除可能です。
資格等の保有による免除
1.大学等で商学に関する科目の教授又は准教授の職として3年以上の経験がある、または商学に関する研究で博士を取得した場合 ⇒ 会計学と経営学を免除可能。
2.大学等で法律学に関する科目の教授又は准教授の職として3年以上の経験がある、または法律学に関する研究で博士を取得した場合 ⇒ 企業法と民法を免除可能。
3.大学等で経済学に関する科目の教授又は准教授の職として3年以上の経験がある、または経済学に関する研究で博士を取得した場合 ⇒ 経済学を免除可能。
4.高等試験本試験合格者 ⇒ 高等試験本試験で受験した科目(商法であれば、企業法)を免除可能。
5.司法試験合格者(旧司法試験第2次試験合格者) ⇒ 企業法、民法(第2次試験で受験した科目。企業法or会計学)を免除可能。
6.不動産鑑定士試験合格者 ⇒ 経済学or民法を免除可能。
7.税理士資格を持っている ⇒ 租税法を免除可能。
8.会計基準や原価計算基準の設定や整備等の業務に従事し、必要な知識を有すると認められる場合 ⇒ 会計学を免除可能。
9.監査制度の設定や整備に関する業務に従事し、必要な知識を有すると認められる場合 ⇒ 監査論を免除可能。
10.旧公認会計士試験2次試験論文式試験で免除科目がある場合 ⇒ 旧2次試験で免除を受けた科目を免除可能。(例:商法なら企業法、経済学なら経済学を免除可能)
終わりに
個人的には、会計専門職大学院を卒業して短答試験を企業法だけ受験して合格した人は何人か会いました。
また、司法試験に合格後、公認会計士試験の論文式試験を合格した猛者にも会ったことがあります。当たり前ですが、めちゃくちゃ頭よかったですね。
大多数は、資格等による免除はなく、地道に勉強して合格する人がほとんどだと思います。もし上記に当てはまりそうな人がいれば積極的に申請したほうがいいですね。申請が通れば大きなアドバンテージになります。
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